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カナダ放浪記#10 〜パトリック・タージョン〜

2002年の春から秋にかけてボクはCANADAのトロントへ行ってきました。
それはスリルと興奮の連続の冒険をしているようでした。
ここでは、そんなカナダの旅を少しずつ書いていこうと思います。
目次

パトリック・タージョン

翌日、ボクは昨日と同じようにギターを抱え、公園のいつもの場所へと急ぎました。予定の時間より随分早いのは知っているけれどボクは早く彼に会いたくて仕方ありません。その日は少し肌寒かったのをよく覚えています。彼が来たら、すぐボクを見つけられるように寒い中ギターの練習を始めました。頭の中は今後の期待ばかりで練習になるはずがありません。一息いれようとした時、パトリックは愛犬フェニックスを連れて満面の笑みを浮かべて現れました。

「家はすぐそこだからおいでよ」

「待ってました!」とばかりにボクはギターを片して、彼に着いて行きました。フェニックスの為に少し公園を散歩してから家に行きたいとの事で一緒に歩くことに・・・。 ただでさえ巨大な犬で目立つのにグレイハウンドはあちらではレスキュー犬として有名らしく、あちらこちらでパトリックに話しかける人々!一緒に歩いているボクまで嬉しくなりました。
 

10分程度で散歩は終わり、彼の家に行くことに・・・。到着してビックリ!ユースからほんの100mたらずではありませんか!もの凄い綺麗なマンションの9F10F部分が彼の家でした。いったいどれだけ稼いでるんだろう?と思えるほど立派なマンションです(勿論管理人付き)。窓からは教会の時計台に、湖まで見えます。

必要最低限のものしか置かれていないパトリックの部屋はボクの理想の部屋でした。(模様替えがし易いし<笑>) 食器洗浄機付きのシステムキッチン、階段を上がり10階部分に行けば、窓から見える風景はトロントの湖岸沿いが一望出来るとてもロマンチックなもの。そんな部屋を楽しんでいると、まずはフェニックスからのご挨拶・・・・お尻に鼻を突っ込んで来ます・・・。確かに丁度良い位置にはあるけれど、とんがった口先がちょっぴり恐ろしい感じ。ボクが逃げるとご主人であるパトリックのお尻に鼻をうずめる始末(笑)パトリックは大喜びです。本当に犬が大好きらしく抱き合って遊んでいましたよ。その愛情表現に今度はフェニックスが逃げる・・・なんともおかしい光景でした。

さて、部屋に到着して間も無く、パトリックは自分の楽器を組み始めました。黒く光るバス・クラリネットを生で見たのはこの時が初めてでした。その音色の太くて甘い、色っぽさに一気に好きになりました。パトリックは一言・・・「バップはやらない、俺はフリージャズが好きだ」と言い、思うがままに吹き始めました。ボクは彼のサウンドを聴いてすぐ、直感で彼がプロではないと分りましたが、初めてのカナディアンの友達、カナディアン・ミュージシャンに今この状況が楽しくて仕方ありません。

ウォーミング・アップを終えた彼はキッチンへ行き、クラッカーにバターを塗り、チーズを乗せボクに幾つかくれました。

やまだ
「おぉ、これがカナディアンの食事か!」

もう楽しくて楽しくて・・・ボクは笑ってばかり。ひとまず楽器を置いて食事をしながら、お互いのことを話始めました。パトリックの家にはいつもピンクグレープフルーツ・ジュースがありました。ボクは今まで飲んだことがなかったのですが、その味に段々とはまっていきました。少し薬品っぽい感じがするけれど。

また彼は凄く優しく、ボクが分らない英語があると言葉を代え、時には大きなジェスチャーでボクに伝えてくれました。またボクが話すゆっくりな英語をじっくりと最後まで聞いて返事をくれました。そこでボクは、何の為にトロントに来たか、今どうしたいのか・・・を話しました。パトリックがケベック州出身でニューヨークで音楽活動をして結婚をしていて、今別居中だということもその時に知りました。一通り、お互いの事を話すと演奏を始めることに・・・・

そこでパトリックはレコーディングをする譜面をボクにくれました。全曲彼のオリジナルですが、その譜面には何一つコードが付いていません。・・・それはおろか、4分の4拍子表記なのに、何故か、それ以上に音符が書かれています。
「これはどう弾けばいいか・・・?」 困惑気味のボクでしたが、パトリックはいきなりオリジナル曲を吹き始めました。音色はとても好きなのですが、ムードが全てフリジアン・モード(専門用語ですみません)ゲ・ゲ・ゲの鬼太郎のテーマ・ソングあるいは、怪物くんに出てきそうな雰囲気と言えば伝わるでしょうか・・。 とにかく、譜割なんてあって無いようなもの、ただ分り易くする為に小節線がひいてありました。全部で6曲ほどありましたが、その全てにおいて共通するムードが鬼太郎なんです(^_^;)

そうは思いながらも、楽しくて仕方ないボクは簡単に合わせていくことに・・・。何曲か演奏するとパトリックは演奏を止め、ボクの音を「ナイス・サウンド」と誉めてくれて実際にレコーディングしたいと言ってきました。あまりお願いされている感じではありませんでしたが、とにかくカナダのミュージシャンと知り合いになることはボクにとっては大きい事だったので喜んで引き受けました。 パトリックはボクがEd Bickertに会えるように、インターネットで探してくれたり、知人に聞いてみてくたりもしましたが見つからない・・Ed Bickertの情報に関しては時間をかけることにして、ひとまずレコーディングに集中することにしました。 それからというもの、ボクとパトリックは毎日のように演奏をすることになったのです。


(憧れのギタリスト Ed Bickert)

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