ジャズギター教則本を発売します!!
教則本の対象者は?
昔、私自身も教則本コレクター的になっていた時期がありました。ジャズギター教則本といっても様々で、難度もバラバラのため、これからジャズギターを始めようとされている方には何から手を付けて良いのか分からないと思います。実は、教則本執筆の依頼をいただいた時、「初心者対象の教則本であれば、お断りしよう」と思っていました。ギターの演奏技術自体のスキルアップための教則本は色々ありますし、今は理論書もかなり分かりやすい本があります。また、私のYouTubeのビギナーシリーズや、初心者用のベーシックな理論の動画レッスンを販売もしています。沢山のYouTubeレッスンと教則本がありますから、ジャズギターの取っ掛かりはもう十分だと感じています。
私が執筆した教則本は『ジャズにトライしてみたけど、なかなか上手にならない。』『どう練習したらいいのか分からない』という、ジャズに手を出した経験のある方にお届けしたい、真のジャズプレイヤーへの道を示したものです。使用する題材こそ違いますが、内容は私が対面レッスンで指導している内容と全く同じものを分かりやすく整理しました。中級者にとっても、どのようにアイデアを整理していくか参考になる内容になっていると思います。
失われてしまった『ジャズ学習の道』
本書の内容は、中級者以上は誰もがやっているのに、近年の教則本には書かれることのなかった内容です。いえ、正確に言えば、これまで発売されてきた多くの教則本が『難解なジャズを分かりやすく、簡単に解説すること』を追求したために、失われてしまったジャズ学習の本当の道です。それって、TAB譜が生まれたためにギター人口は増えたけれど、音符を読める人が少なくなってしまった・・・みたいなもので、ジャズ人口の裾野を広げるためにビギナー用の教材は必要なのです。しかし、「それでジャズが習得できる人がどの程度いるか?」と聞かれたら、「一握り」と答えます。これではジャズは習得出来ない!と、学習の本質に気付けた方のみです。
そもそもジャズって何なのさ?
『ジャズ』のアドリブの練習と言っても、ロックと何が違うの?ロックにだって即興演奏はあるし、ジャズだってスウィング・ジャズ、ビバップ・ジャズ、モーダルジャズ、スムーズ・ジャズ、コンテンポラリー・ジャズ、そして『これってジャズなの?』と思うようなジャズもありますよね。一般的に、多くの方が思い浮かべる『ジャズ』は『Bebop』と呼ばれるものです。ひとことで言うと、
コード進行を頼りに表現をしながら、自在にメロディを奏でる技法
なのです。これを習得するのに、とても時間がかかるわけです。つまり、ジャズでの学習は、この『Bebop』時代の語法(単語)を学ぶこととも言えます。
赤ちゃんがいきなり言語を喋るの?
巷には、ジャズフレーズが列記されて『このコード進行上で、このフレーズを使ってみよう』的なジャズ教則本も多いですよね。もちろん、私も学生時代はそのような教則本で楽しませてもらいました。しかし、定番フレーズを、タイミングに合わせてなぞるだけの練習では、ジャズの雰囲気を感じることは出来ても、ジャズは身に付かないのです。知っているフレーズを使い切ったら何も残りません。ジャズをかじった経験がある方なら分かりますよね。そもそも、中級者以上の方も、プロのプレイヤーだって、そんな練習はしていないのです。
既に知られている通り、ジャズ学習と言語学習のプロセスは非常に似ています。赤ちゃんが『パパ』『ママ』と言葉を覚えていくように学んでいくようにジャズのフレーズを練習することには間違いありませんが、なにか大事なことを忘れていませんか?
赤ちゃんは初めての言葉を発する前に、親の言葉を何ヶ月間リスニングしたのでしょう?自分で何ヶ月間バブバブと試行錯誤したのでしょう?
フレーズ練習はそのあとです。弾きたいジャズをしっかり聴いていますか?聴かないものをどうやってプレイするのでしょうか?リスニング量が増えるに連れ、自分の話したい(弾きたい)ものがイメージ出来るようになります。試行錯誤をした時に、『このフレーズはかっこいい』『このフレーズは良くない』と判断できるようになっていきます。
レッスンと教則本の違い
教則本執筆にあたり、一番考えたのは『どのような順序で記載していくか』でした。たとえば、小学1年生の教科書は、1年生の理解力に合わせて足並みを揃えてありますが、教科書がかんたん過ぎてつまらなく感じる子もいますよね。進級すると理解ができないことが出てくるかも知れません。ジャズの習得においても同様です。対面レッスンでは生徒のレベルに合わせ、適切な時期に、適切な情報を伝授することができます。マンツーマンの家庭教師みたいですよね。理解できていなければ、無理に進めず理解できるまで解説することが出来ます。でも、教則本ではそういうわけにはいきません。
STEP1、音源(リスニング・模倣)
STEP2、度数トレーニング
STEP3、分析(アイデアの取り出しと解説)
STEP4、分解(練習方法)
STEP5、構築(フレーズ制作)
STEP6、反復練習
この流れで、どのように説明するかを考えました。
まず最初に、ハンマリングやプリング、スライドといった表現記号を省いた譜面を掲載しています。もちろんTAB譜もありません。自身の力でリスニングをして、ニュアンスを聴きとりましょう!またポジションを選定してTAB譜を作成するのも効果的です。ここでのポイントは耳コピと同じぐらいの時間をかけることです。鼻歌で歌える&ソロをイメージ出来るほどのリスニングが必要なのです。
コードに対する度数を記載しましょう。音楽のカラーはコードに対する度数により区別されることがほとんどです。音名を度数とリンクさせるようにしましょう。
ここでのスコアは五線譜、TAB譜、度数、分析(分析を解説したページ数)が記載されています。多くの情報を記載しています。面倒に感じてしまうかもしれませんが、これぐらいやるのが普通なんです。
ソロから取り出したアイデアをどのようにアドリブへ繋げるか、道筋をご紹介しています。小難しい横文字を使用せず、理解しやすいようにまとめました。中級者の方はまとめ方のヒントにも繋がると思います。
私が取り出したアイデアを元に自身でフレーズを作りましょう。フレーズを作っている時間がアドリブの練習になっています。赤ちゃんがバブバブと試行錯誤をするように、ミスを沢山してもOKです。リスニング量が追いついていれば、『これが好き!』とジャッジ出来ます。
フレーズが作れたら、あとはひたすら反復です。1日に50回は同じフレーズを弾きましょう。身に付けるためにはそれぐらいの練習量が必要です。控えめに言って50回です。上達が早い人達はもっと練習していますよ。
技法の一人歩き
きっと、この教則本の順序通りに進めるには数ヶ月かかると思います。先を読み進めても構いませんが、最初にお伝えした通り、自分自身で試行錯誤しなければジャズは身に付きません。フレーズの練習?コードトーンの練習?もちろん、全て大事ですよ。でも、一番大事なのはリスニングと自分自身の試行錯誤です。教則本の中で何度も記載しています。読み流してしまうかも知れないので、もう1度書きます
『リスニングと自分自身の試行錯誤が大事です』
ジャズの練習では『スケール練習』『コードトーン練習』『アプローチ練習』など技法に意識が向かいがちです。音楽的なイメージがなく、これらの練習をしても何が正しいのか自身でジャッジできません。やればやるほど、『これで良いのか?』と思うようになります。教則本の技法ばかりが一人歩きしてしまわないか・・・それが一番心配です。
練習のための付属CD
最近の教則本にはCDが付属していますが、よくある模範演奏は本書には納めておりません。教本コレクターだった私がそうだったのですが、個人的に模範演奏CDは数回聴いて終わりです。練習のための活用出来るCDじゃなければ、教則本じゃない!と私は思っているので、付属CDはバンド演奏によるオケにしました。
生バンドによるオケを120BPM、160BPM、200BPMと3テンポで用意しました。irealのようなアプリで流すような機械的で単調なオケではありません。コーラス毎に抑揚が付いていますので、テンション感に合わせてプレイしましょう。
また、リットーミュージックさんにお願いして、公式ホームページからギター伴奏を抜いたトリオでの演奏をダウンロード出来ます。これによって、コンピング(伴奏)の練習や、ギタートリオでの演奏も可能になっています。
運指が違えばニュアンスを失う!
教則本内には、フレーズ作りや、ニュアンスの練習があります。これは音声だけでは不十分です。ジャズの演奏にはジャズらしい運指が必須です。これも音声だけのCDでは伝わりません。教則本内のQRコードから、YouTube動画の模範演奏へジャンプできます。これにより、私の運指を見ることが可能です。
さいごに
経験者にとっては、至極当前の内容。でも、初心者にとってはとても難解です。私はジャズ指導をこれまで17年間、1000名以上の生徒にジャズの技法を伝授してきました。中学生から70代の生徒様まで、生徒達の基礎力、理解力、バックグラウンドはみんなバラバラです。それでも「なんとかジャズを楽しんで欲しい!」という想いで、指導してきたノウハウが沢山あります。横文字の多い分かりにくい言葉や専門用語は多用せず、可能な限り分かりやすく書きました。
目次
【CONTENTS】
◎Chapter 1 ジョージ・ベンソンの「Stella By Starlight」
Method 1 ジョージ・ベンソンに学ぶ“ジャズの歌い回し1″
Method 2 ジョージ・ベンソンに学ぶ“音飲みのニュアンス”
Method 3 ジョージ・ベンソンに学ぶ“代理コードのアルペジオ1″
Method 4 ジョージ・ベンソンに学ぶ“アプローチ技法1″
Method 5 ジョージ・ベンソンに学ぶ“解決フレーズ”
Method 6 ジョージ・ベンソンに学ぶ“ジャズ単語1″
◎Chapter 2 グラント・グリーンの「All The Things You Are」
Method 1 グラント・グリーンに学ぶ“3rd音の連結”
Method 2 グラント・グリーンに学ぶ“代理コードのアルペジオ2″
Method 3 グラント・グリーンに学ぶ“ディミニッシュ・アルペジオ”
Method 4 グラント・グリーンに学ぶ“モチーフ・デべロップメント”
Method 5 グラント・グリーンに学ぶ“ツー・ファイヴ進行上のクリシェ”
Method 6 グラント・グリーンに学ぶ“メロディの引用”
◎Chapter 3 パット・マルティーノの「Just Friends」
Method 1 パット・マルティーノに学ぶ“アプローチ技法2″
Method 2 パット・マルティーノに学ぶ“メジャー7thインターヴァル・リック”
Method 3 パット・マルティーノに学ぶ“○7th上のIIIm7(♭5)アルペジオ”
Method 4 パット・マルティーノに学ぶ“○7th上の♭VII△7augアルペジオ”
Method 5 パット・マルティーノに学ぶ“ジャズの歌い回し2″
◎Chapter 4 ウェス・モンゴメリーの「I Remember You」
Method 1 ウェス・モンゴメリーに学ぶ“アンティシペーション”
Method 2 ウェス・モンゴメリーに学ぶ“リズミック・アプローチ”
Method 3 ウェス・モンゴメリーに学ぶ“ジャズの歌い回し3″
Method 4 ウェス・モンゴメリーに学ぶ“アドリブ上の代理コード”
◎Chapter 5 ジョー・パスの「Yardbird Suite」
Method 1 ジョー・パスに学ぶ“オーギュメント・アルペジオ”
Method 2 ジョー・パスに学ぶ“ジャズ単語2″
Method 3 ジョー・パスに学ぶ“コード崩しフレーズ”
Method 4 ジョー・パスに学ぶ“リハーモナイゼーション”
[巻末付録]
プレイヤー目線でのリスニング・ガイド