それはスリルと興奮の連続の冒険をしているようでした。
ここでは、そんなカナダの旅を少しずつ書いていこうと思います。
暗雲
ガサゴソっ ススっ
ガサガサ カタっ ズズズズっ
その夜、妙な音を耳にしたボクは目を覚ましました。
ズズズっ・・・・・ガサガサ・・・・・。
ボクはこの音がなんなのかを突き止めようとベッドの上で横になったまま目を見開いていました。
・・・・・ゴソゴソ・・・・ズズズっ。
そう気付いたボクは、部屋の明かりもつけないでキッチンへ行きました。そこでもう一度、その音を発している場所を特定する為に気配を消すと・・・・・ガザガザっ!
仕方ないので、このネズミの処分はリーに任せました。するとリーは突然箱を縦に数回振はじめ、(当然中のネズミが箱内部に当たってガタガタと音がしてまいます)なんと2階のベランダから天高く投げたではありませんか!何がしたいのか分かりませんが、リーはとにかく自分の部屋に戻ってこなければそれで良いと思っていたらしく、外に投げたらしいのです。2階から天に向かって投げられたクッキー箱は数秒で地面に「カタっ」という軽い音でぶつかりました。その後ネズミがどうなったかは知りませんが、ネズミ捕獲大作戦は成功し、リーは大喜びしていました。
(画像はイメージです)
「トゥルルルルルルルー」翌朝、電話の音で目が覚めました。リーが電話を取ったのですが、相手は昨日会ったばかりのスティーブでした。どうやら日本行きの補助金が出たらしく大喜びで電話してきたんです。「やっぱりお前は幸運のサインだった!」って言ってましたね。そして、Ed Bickertの電話番号も調べてくれたらしく、なんとあっさりと電話番号をゲットしました。流石はスティーブです。朝から興奮してきたボクはそのままサイバーカフェに行き、 その後は公園で充実してきたトロントでの生活を思い返していました。
それから何日が過ぎたでしょうか?ボクはなかなかEd Bickertに連絡することが出来なかったんです。今は引退しているミュージシャンが名前も知らない外国から来た1人の男に会ってくれるんだろうか?と・・・・・・。スティーブは電話番号を教えてくれた時こう話していました。「Ed Bickertは優しい人らしいからきっと会ってくれるよ。万が一、会ってくれなかったら、彼に失望すればいいんだよ」 そうは言っても、やはり会いたい・・・。どう話したら会ってくれるだろうか?そう考えながら何日も過ぎてしまいました。 そして、何故かデビッドからも全く連絡がありませんでした。全てが上手くいっていると確信した瞬間から1つでも望むようにいかなければ、全てが不安で不満に思えてきました。 デビッドから連絡がないのも何らかのトラブルなのかも知れないのに、「彼だって見ず知らずの日本人なんて相手にしないんじゃないか」って思っていました。 スティーブからの連絡は頻繁にありました。私が帰国する前に一回一緒に演奏しようということで色々と連絡をよこしてきたのです。パトリックがレコーディング以降元気がないので スティーブからの電話はとても嬉しかったですね。彼と居ると全てが良い方向に行くような気がしていました。
ある日、サイバーカフェのオーナーからパーティーに誘われました。以前誘われた時は、パトリックとの予定があり行けなかった為に今回は参加することにしました。 場所は電車からバスに乗り継いで計30分ほどです。バス停を降りると目の前がそのオーナーのお宅でした。今回はタカが居ないのでリーと2人で参加です。パーティーの名目は「ブルコギ・パーティー」らしい・・・・部屋に入ると数回あったことがある韓国人女性シンディが話しかけてきました。(シンディとはつい最近まで連絡を取っていたのですが、日本と韓国ではうまく交流も取れませんね)
シンディはステイ歴も長く、年齢も一番年上でとてもフレンドリーでした。 会うたびに「ヘイ、シノブ、ギター聴かせて」って言ってましたけど・・・。 ブルコギ・パーティーでは円卓に韓国人がずら~~~~、日本人はボクともう一人だけでした。その女性と少し話もしましたが、どうも感覚が違います。何の目的で来ているかがハッキリしていて、時間的にあまり猶予もないボクには彼女達のような生活が羨ましかったんでしょうね。その後、日本から遊びに来ているという男も参加して色々話しました。良い気分転換になりました。この頃のボクはなにかに追われているような気分でした。 カナダに居られる時間がこくこくと短くなっていることを感じずにはいられませんでした。やらなければいけないことがまだ沢山あるだろう! ボクはいつも自分に言い聞かせていました。
パーティ-から帰るとリーといつものようにベランダで話しました。リーは「サイバーカフェのオーナーやシンディ達とは会いたくない」と漏らしていました。何が原因なのかはわかりません。優秀な彼には彼女達に学校を辞めたことや、普段の生活の事を色々と言われて心中穏やかではなかったのかも知れません。そしてリーは片思い中の彼女のことを多く話してくれました。 ボクはリーにEd Bickertのことを相談しました。今はタカも居ないし、言いたいことを言えるのはリーくらいですからね。翌日、ボクは思い切ってEd Bickertに電話をしました。
「トゥルルルルルルルル・・・・ガチャ」
ボクが言うと留守電でした。その後も何度もかけましたがEd Bickertは電話に出てくれませんでした。仕方がなくボクは「時間がないこと、折り返し電話をしてほしい」とメッセージに入れ、しばらく待ちました。しかし、Ed Bickertがうちの電話を鳴らすことはありませんでした。ボクはEd Bickertからの連絡を待つと同時にデビッドに再び会いにいくことを決めました。何も動かなければ何も始まらない、精一杯やって駄目だったら仕方ないじゃないか!悔いを残さないようにしよう! カナダに行く前に決意したことを再認識してボクは毎日、ドラゴンボールZ英語版を見るのが日課になっていました。(全然再認識してないやん!!)
夕方になったらフラフラと外に出かけました。トロントの有名クラブの1つ、REXにふらりと行ったこともありましたね。出演していたのは「ロン・デイビス」でも、私はまだ彼と知り合ってませんでした。クラブからのその帰りみちは適度に酔っ払って、マックに入ってポテトをかじりながら帰ったり、チョコレートドリンクを買って歩いたこともありました。飲んだ後の甘い物は美味い!忘れられないのはお寿司をかったこと。
急に米が食べたくなって、カッパ巻きを食べたんです。そしたら、夜中、あまりの激痛で目が覚め、冷や汗がどんどん出てくるではありませんか、もうトイレに駆け込んで何回も吐きました。吐いたら、腹痛がきて座り・・・治まったらまた吐いて・・・・ 気付けば朝方になっていました。カッパ巻きの海苔が喉につまっている感覚と今まで味わったことのない痛み・・・。そうボクは食物にあたったことが一度もなかったんです。 ズキズキと痛むお腹を抱えながら何度もトイレとベッドを行き来しているのにリーは爆睡中。もう駄目だと思ったボクはリーを起こし、薬を持っているか?尋ねました。するとリーが持ってる!!!!! ボクはすぐにその薬を飲み休みました。徹夜の死闘の果てに気付いたら、もう昼過ぎで知らない間に寝てしまっていたようです。腹痛は治まっており、下痢気味でしたが体調はそこまで悪くありませんでした。
きっと遊びほうけてたボクに神様が気付かせてくれたのでしょう。何の為にカナダに来ているかということを。