それはスリルと興奮の連続の冒険をしているようでした。
ここでは、そんなカナダの旅を少しずつ書いていこうと思います。
自信を持て!
デビッドのライブから帰るとすぐボクは練習を始めました。今日観た演奏、聴いた音。1つでも多くのことを学び吸収したかったから。リーはボクが毎日毎日狂ったように演奏するので 「おまえは天才だ!」とか言いながら、自分はポテトチップスを食べたり、TVを観たり、ぐ~たらな親父のようでした。翌日、目覚めると隣の部屋の女の子がベランダに出ていました。アラブ系の顔立ちでしっかりしてそうですが子供はやっぱり子供。 遊びたい盛りです。この日、その隣の女の子がアルファベッドを逆さ読みしていました。よくある歌で「ABCDEFG~」とは簡単に言えますが、「ZYXWVU~」言えない!やはり育ちが違う。 英語には小さい頃から触れていたかったなぁ。
翌日早速サイバーカフェに行き、デビッドにメールを送りました。よしよし、これで新しい繋がりが出来たぞ!音楽の方は順調にいく兆しが見えてきました。 レコーディング後のパトリックはというと演奏を全く止めてしまいました。プライベートのいざこざ、まぁ分かりやすく言えば奥さんと喧嘩ばかりしていて精神的にぐったりとしていました。パトリックはよくボクに相談してきました。音楽を演奏し続けていくのは非常に困難なことだと。勿論、お金を稼ぎ出すことが難しいということもあるでしょう。しかし、それ以上にパトリックは理解のある人と巡り合うことが非常に困難だと言っていました。事実、パトリックはニューヨークでバリバリと仕事をしていた所、音楽がやりたくて、奥さんをニューヨークに置いてトロントに来てしまったのです。その奥さんがトロントに来て、喧嘩になってしまったのは当然かも知れません。日本も外国も大した違いはないなぁと思いました。そしてパトリックは背中を痛めてしまい、度々パトリックに電話しましたがやはり元気のない返事ばかりでした。パトリックはボクに「セッションに行け!」と何度も言っていました。言葉が通じないからセッションに行くのはかなり迷いましたよ。
ある時から、思い切ってパトリックの勧めていたダウンタウンの西にある「GATE403」というバーにギターを持って行きました。パトリックの話ではRON DAVISという 素敵なピアニストがホストを務めているとの事。かなり楽しみでした。GATE403につくと窓が開いており、まるでオープン・カフェならぬ、オープン・バーのようで外から中が丸見えでした。そして生きの良いラウンジ・ピアノが聴こえてきました。奥に入っていくと、一人の男がピアノを弾いていました。
と思いながら聴いていると、そのピアニストはMCで「ようこそ、GATE403・サンデージャムへ。私はスティーブ・コーヴァン。ロン・デイヴィスはどこだい?」などと言っているじゃありませんか?
そう思っていると「今日はロンに代わり、ホストを務めます。セッションに参加したい方は手を挙げてください」って。おっ、やばいやばいとすかさず手を挙げました。そのピアニストは再び、もう1曲演奏し終えるとボクの元へ来て「どんな曲をやりたい?」と聞いてきました。 私はセッション程度であればどんな曲でも大丈夫であろうと「なんでもOKだよ」と強気な発言をし、自分が日本から来たことを告げました。するとそのピアニストは「今年、ツアーで日本に行くかもしれないんだよ!」とおおはしゃぎ。会話もほどほどに、セッションが始まりました。
クラブで演奏するのは指を骨折して以来初めてなので約1年振りの演奏。ベースやドラムが居ないため、ピアノとDUOで演奏が始まりました。久し振りだからか外国での演奏のためか結構緊張しましたが、何故かとても観客受けが良い。ソロが終わると大きな拍手をいただきました。よく演奏するスタンダードを5曲ほど通して演奏すると休憩になりました。そのピアニストはボクの演奏を気に入ってくれて、「日本で一緒に仕事をしてくれないか?」と聞いてきました。こんなおいしい話はないので快くOKすると現在、日本行きの補助金を申請しているところだと。「明日結果が分かるんだが君と会ったことは、グッドサインだ」と言い、ボクが何故カナダに来たのか?いつまでカナダにいるのか?日本ではどこで活動しているか?など色々聞いてくれたため、ボクは「Ed Bickertを探しているんだ」と答えました。
すると早速、セッション第2ラウンドでは客席に向かい大きく宣伝してくれました。「日本からEd Bickertに会う為にきました。シナ~ブ!」・・・・・
まぁ、細かい事は気にせず夜が更けていくとセッション参加者は次々に増えていき、沢山の人と演奏しました。ベースが居ない為にベース役に回りソプラノ・サックスとDUOでやることもありました。ボクはほとんど休みなしに弾くことが出来とっても楽しかったです。
その日スティーブ(ピアニスト)はボクを車で送ってくれました。彼のCDを貰い帰る前に一緒に演奏する約束をしました。ロンディヴィスではなかったけれど、この出会いはボクにとって非常に大きなものでした。スティーブは世界をツアーで駆け回っているピアニストであり、自ら音楽教室も経営し、更には底抜けに明るい性格なので一緒にいてかなり楽しい。また車の中で「ケニ-カークウッド(パトリックの先生)を知ってるかい?」って聞くとかなりの仲良しらしいのです。なんという繋がりでしょうか! 翌日、パトリックの家に遊びに行き、この事を話すと「スティーブ・コーヴァン?」と凄くビックリしていました。というのもボクが昨日貰ったCDをパトリックは持っていたのです。この出来事にはパトリックはまるで自分のことのように喜んでくれました。
数日が過ぎましたが、デヴィッドからは未だに連絡がありませんでした。実はこの頃、ボク達の家にネズミが入りこんだのです。夜になるとキッチンでカタカタと音がして、翌朝おきるとパンがかじられていたりとリーとボクはネズミをどうにか出来ないかと考えていました。 ネズミのおかげで床に寝ているボクの布団にはダニがついたらしく、身体中を何箇所もかまれ痒くて仕方ありません。寝るのも大変で夜中に痒さで何度も目が覚めました。しかしリーはベッドの上なので、全然平気でイビキをかいて寝ています。「カッチ~~ン!」ときたボクは昼間リーの居ない時に自分の毛布をリーのベッドの上で バタバタ・バタバタ・・・そう布団を干す時のようにバタバタ・バタバタと・・・・。すると翌朝、リーは身体中が痒くて仕方ない模様で真剣にネズミ対策を考え始めました。鬼だな、ボクは! ネズミ捕りを仕掛けても駄目だし、一旦は外に出てラッキーと思ったのですが暑くて窓を開けている事が多く入ってきてしまうんです。そんなうんざりする夜が何日も続いたある日、クッキーを食べていると何かが閃きました。 クッキーの箱でトラップが作れるぞ!そう思った私は早速、制作し始めました。文章だけでこの作り方を説明するのは非常に難しいのですが、ようは「入ったら最後、出られないクッキー箱」を作ったのです。中に入れた物はチーズを付けたパン。ネズ公の大好物でっせ。
気になる捕獲結果とディヴィッド、そしてスティーブの今後の模様は次回。