引き出しとリック
今回は「引き出し」と呼んでいる重要なアイデアについて考えてみましょう。多くのジャズ初心者は「これはツーファイブ・フレーズ」「これはマイナーのフレーズ」・・・と、覚えたものを演奏しています。勿論、これは言語を学ぶ時に模倣することと同じで、誰しも通る道です。私はこれを「リック」とか「ネタ」と呼んでいます。
リックだけじゃダメ!
リック(ネタ)は、覚えればすぐジャズっぽくなるしカッコいい!だからやめられなくなって、ネタを繋ぎ合わせたソロばかりになってしまう。時にはソロの90%以上がネタだったりする人もいます。・・・それって即興ですか?
カッコ良いポイント
そのネタのどこがカッコ良いのか、考えたことがありますか? そのネタが何故カッコ良いと感じるのか、考えたことがありますか?
そのフレーズのどこがカッコ良くて、どう演奏しているからカッコ良くなるのかが分かったら、それが引き出しというものです。どんどんストックしておきましょう。その「引き出し」から、色々なフレーズを生み出してみて下さい。
リック(ネタ)と引き出しの大きな違いは、リック(ネタ)は何回弾いても同じフレーズということ。つまりはライブでは2回弾いたらリック(ネタ)だってバレてしまいます。 引き出しとは、同じアイデアで沢山のバリエーションで演奏することが出来ます。
引き出しとは具体的にどんなもの?
リズムの可能性は置いておいて
ジャズ言語では「2拍4音」が最小単位の単語であり、アイデアの引き出しは2拍4音以上の音の集合体で捉えましょう。3音でも単語にはなりますが、単語として成立させるために、リズムの力を借りて引き出しにしています。「ダバダバ」と弾いてジャズ言語に聴こえるのは2拍4音以上になります。
ジャズ・リック
例えば、こんなリックがあったとしましょう。
どこをカッコ良いと感じるかは人それぞれですが、
そのカッコ良いポイントがどのように演奏されているかを調べます。
Aさんはここかも知れません。
Bさんはここかも知れません。
Cさんはここかも知れません。
Dさんは全てかも知れません。
ポイント
それぞれの好みが個々のスタイルを作っていくのですから、間違いもなければ正解もありません。ただ、このリック(ネタ)ばかり弾いていては、即興演奏には近付けません。
引き出し(アイデア)を応用させる
例えばAさんが好きだったこのポイント。このアプローチはC7上で、裏コードであるGb7を演奏した4音のアプローチです。つまり、この浮わついた感覚にAさんはグッときたのでしょう。「裏コードを弾く」という引き出しを元に、例とは別のフレージングをすることが可能です。
Ex.1 -C7で裏コードであるG♭7を想定したフレーズ
Ex.2 -C7で裏コードであるG♭7を想定したフレーズ
こんな感じでも良いですね!
ポイント
今回の例では、元となるリックから「7thコードで裏コードを弾く」という引き出しを得て、別のフレーズへと応用させてみました。どんな進行の時に使えるか?どんなムードの時に使えるか、どの音から裏コードへ入るとグッとくるか?など、弾けるようになってからも試行錯誤をしていきます。